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スエズ運河座礁/所有者船主と運航会社の関係性と賠償責任

コンテナ船の運航の仕組みがよくわからない

エジプト、スエズ運河で日本のコンテナ船エバーギブン号が座礁したニュースを見ていて疑問があるんだ。
運航会社によると、座礁による損害賠償の責任は船主にある、と言っている。
また、日本のコンテナ船なのに、何故かパナマ船籍。
これらは一体どうして?

学者や専門家を目指すわけではない息子に、広く浅~く教える超簡単シリーズ。今回も、誤解を恐れずチョー簡単に説明していきます。

目次

息子:船を実際に運転(?)していたのは運航会社でしょ。事故を起こしたのは運航会社なのに、なんで船主が賠償することになるの?

私:きっと船主と運航会社の間で、そういう契約になっているんだよ。

息子:そもそも、船主と運航会社って、別々の会社なの? 同じじゃないの?

私:レンタカー会社からトラックを借りて、荷物を運んでいた、ようなもんだね。

息子:だったらやっぱり事故を起こした運転手に責任があるようにしか思えないよ。

私:今回座礁した船舶、エバーギブン(エヴァーギヴン)号の所有者である日本の会社、正栄汽船と、実際に運航していた台湾の会社、長栄海運の契約内容はわからないけど、コンテナ船が運航される場合のパターンをいくつか教えてあげるよ。

海運会社

コンテナ船に限らず、タンカーやフェリーなどを運航する会社を、海運会社というんだ。豪華客船なんかもそうだね。
かなりアバウトだけど、海運会社の仕事は大きく次の4つ。
船を所有する。
船を管理する。
船員を管理する。
運航する。

そして、登場人物は次の4者。
①船主
②船舶管理会社
③船員管理会社
④運航会社

船主と運航会社の関係性

4者の役割はそれぞれ
①船主は、船を所有している。
②船舶管理会社は、船主から委託された船舶を管理し、運航会社へ貸し出す業務をしている。
③船員管理会社は、船員を育成し、船舶管理会社へ派遣する業務をしている。
④運航会社は、船舶管理会社から船舶を借り受けて※1、船舶の運航※2をする。

※1 傭船または用船という
※2 各国各社から荷物を集めて、各国各社へ運ぶこと


パターン1

自社で全部行う

船舶を所有する→船主の立場。
船舶を管理する→船舶管理会社の立場。
船員を管理する→船員管理会社の立場。
船舶を運航する→運航会社の立場。

これらの仕事を全部自分達でやってしまうんだ。とても大きな規模の会社だね。


パターン2

自社では船舶を所有するだけ

船舶を所有する→船主の立場。
船舶を管理する→船舶管理会社へ委託する。
船員を管理する→船員管理会社へ委託する。
船舶を運航する→運航会社へ船を貸し出す。

自社では船を所有するだけで、あとは全て他社へ委託してしまうんだ。
船は持っているけど、管理のノウハウがなかったり、船員の育成が苦手だったり、集荷や運航のルートを持っていなかったり。そんな場合は、専門の会社へ任せてしまおうということだね。
逆に、運航は得意だけど、船を持っていない場合。船を造ったり買ってきたりすればいいんだけど、造船にかかる何百億円もの資金を用意することができなければ、船主から傭船してしまおう、ということになる。
お互いがwin-winの立場で契約が成立するんだよ。


パターン3

自社で船舶を所有・運航し、傭船も行う

パターン1のような大きな海運会社でも、こんな場合も考えられる。
海運会社Aは、船舶はたくさんあるのに荷物がない。
海運会社Bは、荷物はたくさんあるのに船舶が足りない。
そんな場合Aは、遊んでいる船を貸したい。
Bは、仕事を逃さないために船を借りたい。
お互いの希望が合致して、一つのプロジェクトとなる。

もっと他にも、たくさんのパターンがあると思うけど、大体このくらいでいいかな。


今回のスエズ運河での座礁事故は、詳しいことはわからないけど、このパターン2かパターン3だったんじゃないかと思うよ。

運航会社である長栄海運(英語名はエバーグリーンマリン)が、船員付で船をチャーター(傭船、用船)していたら、船員付で船を貸した船主、つまり正栄汽船に損害賠償責任があると言われても合点がいくね。
水先案内人は何をしていたんだという疑問は残るけど。
実際のところは契約内容や、海運業界の慣習によると思うな。

日本の船なのになぜパナマ船籍なの?

息子:座礁した船の写真を見ると、側面に「EVERGREEN」って書いてある。船首には「EVER GIVEN」って。これは何?

私:EVERGREENは運航会社の名前だね。長栄海運の英語名。通常船舶には、船主の名前ではなく運航会社の名前がかかれているんだ。
EVER GIVENは船の名前。エバーギブン号。

息子:このコンテナ船、エバーギブン号は、台湾に貸し出された日本の船なのに、何でパナマ船籍なの?

私:人に国籍があるように、船舶も国に登録する必要があるんだ。船主の国に登録しないのは、何か理由があるんだよ。租税や法規制を逃れるためかもしれないね。日本で登録すると税金が高いとか、乗組員の国籍が問題になるとかかなあ。きっと、パナマで登録することによって、色んなメリットがあるんだろうね。でも、決して違法なことではないんだ。

今回の座礁事故では、少なくとも7つの国が登場するね。
日本の船。
台湾の運航。
パナマ船籍。
エジプトのスエズ運河。
インド国籍の船長、船員。
中国を出航。
オランダへ向かう途中。
保険会社はどこだろう?
海運とは、まさに世界をまたにかけての大きな仕事なんだ。

スエズ運河とパナマ運河

息子:ニュースの写真をみていると、砂漠の中のただの川に見えるけど、いくつもゲートを通過して高地を抜けるんじゃなかったっけ?

私:よく知っているね。でもそれはパナマ運河のことじゃないか。今回の話題はスエズ運河。

スエズ運河はエジプトにあり、紅海と地中海を結ぶ全長190kmの人工の運河。通航料は平均で1回3,000万円位かかるみたいだ。

息子:えーっ! 通るのにお金がかかるの!? しかもそんなに高いの!?

アジアからヨーロッパへ行くのに、南アフリカの喜望峰を回るよりずっと早く行けるんだ。運航の時間や距離が短縮されるので、荷物を早く届けることができるし、燃料費も少なくてすむ。船員のお給料もね。そして海難の危険も少なくなる。いいことがいっぱいあるんだ。
くねくねした走りづらい一般道を避けて、高速道路でビューン、みたいなもんだよ。

息子:パナマ運河はどこにあるの?

私:パナマだよ。パナマ運河だからね。

パナマはコスタリカとコロンビアに挟まれた、南米の国。西(南)は太平洋、東(北)はカリブ海に面した、南米大陸の細~くなったところにあるよ。運河を作るには、やはり細いところが条件がいい。

パナマ運河では、いくつかのゲート(閘門)を通り、その都度水位を上下させ、低いところから高いところ、そしてまた低いところへと移動し、太平洋とカリブ海、その先の大西洋を行き来するんだ。
全長は約80km。とても幅の狭いところがあり、そこは自力で航行できないので、左右の電気機関車で牽引してもらうんだよ。そのためかどうか知らないが、通航料も高い。今回のエバーギブン号クラスだと、2億5千万円位になるかもよ。

それでも、南米大陸の最南端を回り込まずにパナマ運河を通るのは、スエズ運河を利用するのと同じ理由だね。

世界中の船の多くは、どんなに大きくしたくても、このパナマ運河を通れるサイズを超えて造られることはないみたいだ。この、ギリギリ通れるサイズをパナマックスって言うんだけど、ここは避けては通れない路ということ。それほど価値のある運河なんだね。
今では、陸路の併用などを前提に、パナマ運河を利用できない特大サイズの船もたくさんあるようだ。ちなみに、今回話題のエバーギブン号は、パナマ運河を通れない。

どんなに大きな冷蔵庫が欲しくても、玄関の幅より大きいのは買わないよね。それでも、もっと大きいのが欲しかったら外に置いておくしかない。牛乳飲むたびに、外まで取りに行かないといけないけどね。
(ちょっと違うか?)

ナツ亀